かきキズ(ひっかきキズ)とは

かきキズ(ひっかきキズ)は、爪の先など、とがったもので引っかいてできたキズのことを指します。

かきキズ(ひっかきキズ)とドライヒーリング

過去には、かきキズ(ひっかきキズ)を含め、すりキズや切りキズなどのキズに対しては、乾燥させて治す、ドライヒーリングと呼ばれる療法が良いとされていました。キズに消毒薬や軟膏を塗布したり、保護のために一般的なばんそうこうも使われており、根本には化膿を防ぐために乾燥させて治す(=ドライヒーリング)、という考えがあったようです。しかし、この療法を行うと、キズを治すために創傷部から出てくる体液が、かさぶたに邪魔されてわずかな量しか残らず、キズを修復するはたらきが弱くなるため、キズの治りが遅くなったり、キズの痕が残りやすくなったりします。

「モイストヒーリング(湿潤療法)」
によるキズの手当て

 

以上のように、ひと昔前は、「キズは消毒して、乾かして、かさぶたを作って治す」というドライヒーリングの考え方が主流でした。しかし近年では、ヒトが生来持っている自然治癒力に着目した、「キズをしっかり覆い、潤い(体液)を保ってきれいに治す」、モイストヒーリングというキズケアが一般的になってきています。

キズを負うと、キズ口から体液(滲出液)が浸み出してきます。この中には、キズ口の異物や雑菌、不要となった組織を排除するための因子、またキズをきれいに治すための因子などが含まれています。モイストヒーリングでは、キズを治すための成分が含まれた体液(滲出液)でキズ口が覆われるため、体液を拭き取ったり、ガーゼに吸わせて乾燥させてしまったりするよりも、治癒のスピードは比較的早くなります。

また、キズが早く治る以外にも、乾燥を防ぐことにより痛みを軽減することができたり、かさぶたを作らないことでキズ跡が残りにくくなったりすることも、モイストヒーリングのメリットです。

すりキズや切りキズだけでなく、かきキズに対しても、このモイストヒーリングを取り入れたキズパワーパッドが有効です。キズを早く、きれいに治すことができるので、是非一度試してみてはいかがでしょうか。

*動物にひっかかれたキズや深いキズ、ガラス・木片・砂・ほこり・衣類の繊維など異物が入り込んだキズなどは感染の恐れがあるためキズパワーパッドは使用できません。病院に行きましょう。

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監修:市岡 滋(いちおか しげる)先生

 

<現職>
埼玉医科大学形成外科教授

<略歴>
1988年 千葉大学医学部卒業、東京大学形成外科入局、
大学および関連病院で臨床を研鑽
1993~1997年 東京大学大学院(博士課程)にて創傷治癒の基礎研究
1998年 埼玉医科大学講師
2000年 埼玉医科大学助教授
2007年 埼玉医科大学教授
2020年 埼玉医科大学病院 副院長

 

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参考文献
正しいキズケア推進委員会 「正しいキズケアBOOK1」
小学館 デジタル大辞泉
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%BC%95%E3%81%A3%E6%8E%BB%E3%81%8D%E...