そもそもやけどとは?
起きるメカニズムを解説

・やけどはなぜ起こるのか
やけどは皮膚の損傷であり、通常は熱、化学物質、または摩擦によって引き起こされます。

・やけどするとどうなるか
やけどによるキズ口に切れ目があると、その部分から体内に菌が侵入し、皮膚感染症を起こす可能性があります。

▲やけどのキズのイメージ

やけどの種類と原因

熱によるやけど以外に、以下のようなものもやけどに含まれます。

・低温やけど
比較的低温の熱源に長時間接触することによって起きるやけどです。電気カイロやホットカーペット、湯たんぽなど、瞬間的には熱さを感じないものに、皮膚が密着した状態が続くことで、皮膚の深い部分までやけどが及ぶことがあります。

・日焼け
太陽光に含まれる紫外線による日焼けも、やけどの一種です。肌が赤くなったり、皮がむけて痛みを感じることもあります。

・化学やけど
強い酸や、溶剤などに触れることにより起こるやけどです。

・電撃傷
電流に触れることによって起きるやけどです。

やけどの深さによる重症度分類

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やけどの深さ

やけどは、キズの深さによってⅠ度~Ⅲ度分類され、Ⅱ度浅達までのものを軽度のやけど、Ⅱ度深層以上のものを重度のやけどと分類します。

【Ⅰ度】
表皮のみのやけどで、赤みとヒリヒリとした痛みを起こします。

【Ⅱ度】
水疱(水ぶくれ)ができるようなやけどで、やけどの深さによりⅡ度浅達とⅡ度深層の2種類に分けられます。
・Ⅱ度浅達
真皮の浅い層までやけどが及び、びらん(ただれ)と強い痛みを起こします。
・Ⅱ度深層
真皮の深い層(皮下組織のすぐ上)まで、やけどが及んだものです。

【Ⅲ度】
真皮を含む皮膚の全ての層までやけどが及び、表皮が硬くなって灰白色になります。

やけどの深さと症状、対処法について

  やけどの深さ 損傷組織 症状 対処法
軽度のやけど Ⅰ度 表皮のみ 赤くなるのみ 清潔な流水でしっかり冷やす。治癒タイプのばんそうこうや、救急ばんそうこうなどで皮膚を保護する。
Ⅱ度浅達 真皮の浅い層まで 水ぶくれができる 十分に流水で冷やした後あと、水ぶくれをつぶさないように保護する。範囲が広い場合は医師の診断が必要。
重度のやけど Ⅱ度深層 真皮の深い層(皮下組織のすぐ上まで) 水ぶくれができる 医師の診断が必要。症状によっては移植手術が必要な場合がある。十分に流水で冷やしたあと、清潔な布などをかぶせて病院へ。
Ⅲ度 真皮を含む皮膚の全層 表皮が硬くなって灰白色になる すぐに形成外科など専門の病院へ。衣服の部分が火傷を起こしている場合は、服を脱がしたり、切ったりせずそのまま冷やす。

やけどを負ったときの応急処置

・冷やすことが重要
熱によるやけどを負ったときは、少しでも早く流水(水道水)で冷やすことが重要です。洗面器などにくみ置いた水ではなく、流水を使い、20分程度を目安に冷やすようにしましょう。
範囲が広い場合や、やけどが深そうな場合は病院へ行くようにしてください。
なお、服を着た部分をやけどした場合、服の上から水をかけて冷やします。あわてて無理に服を脱がせたり、切ったりすると皮膚をキズつけてしまう恐れがあるので、注意が必要です。

・体の部位別の処置
手や足のやけどの場合は流水で冷やしましょう。流水を当て続けるのが難しいような、顔や頭にやけどを負った場合は、濡れたタオルや、タオルで巻いた保冷剤や氷を当てるようにしましょう。

・子供のやけどの処置で注意すべきこと
子供は大人と比べて体表面積が小さく、冷やし続けると体温低下を引き起こしやすいため、冷やし過ぎないよう注意が必要です。

軽いやけどの場合のご家庭での処置

軽いやけどの処置の仕方

Ⅱ度浅達よりも浅い、軽度のやけどの場合に限り、モイストヒーリングでケアすることができます。よく冷やしたあと、モイストヒーリングができるばんそうこうで保護することで、ヒリヒリする症状をやわらげ、湿潤環境を維持することでやけどした皮膚の回復を促します。
また、やけどでダメージを受けた皮膚は、菌による感染を起こしやすいので、入念な経過観察が必要です。

*やけどの深さは判断がつきにくいので、迷ったら必ず病院で医師の診断を受けてください。

水ぶくれができた場合

水ぶくれの中はキズを治す成分が含まれており、加えて外部からの菌の感染を防いでいるため、自然のモイストヒーリングになっています。しかし、そのままの状態では服や物に当たって痛かったり、つぶしてしまったりするので、救急ばんそうこうでカバーするのが良いでしょう。

もし水ぶくれがつぶれて、皮がむけて赤くなっている場合には、十分に洗浄したあと、救急ばんそうこうなどで保護し、患部を清潔に保ってください。

低温やけどは軽く考えてはいけない

やけどの種類によっては、冷やすだけでは効果が期待できないことがあります。そのひとつが低温やけどです。

一般的にやけどが起きる温度よりも低い温度の刺激に長時間触れることで、皮膚の深い部分でやけどが起こり、低温やけどとなってしまいます。例として、電気カイロやホットカーペット、湯たんぽなどに、皮膚が密着した状態が長く続く場合が考えられます。また、冷却スプレーの誤った使い方でも低温やけどが起こります。

表皮には赤みや水ぶくれなどの症状は見られませんが、比較的低温の暖房器具を、意図せず長時間使用したときや、皮膚の刺激が感じにくいなどの症状を感じたら、病院で医師の診断を受けましょう。

低温やけどを負わないための対策として、以下のことが考えられます。

1. 湯たんぽは就寝時に布団から取り出す
湯たんぽで寝具を暖める場合には、あらかじめ湯たんぽを入れて布団等を暖めておき、就寝時には取り出すことも対策の一つです。湯たんぽの使用に際しては、必ず製品の取扱上の注意等を確認し、それに従って使用しましょう。特に、湯を注いで使用するタイプの製品など、就寝時に布団から出して使用するような指示がある湯たんぽについては、必ず布団から出しましょう。

2. カイロの使用法を守る
使用する際は、カイロが直接肌に触れることを避け、下着の上から付けるか、ハンカチなどに包んで使うようにしてください。「貼るタイプ」のカイロは、絶対肌に直接貼らないでください。また衣服に貼った場合でも時折位置をずらすようにしてください。

「モイストヒーリング(湿潤療法)」
によるキズの手当て

 

ひと昔前は、「キズは消毒して、乾かして、かさぶたを作って治す」というドライヒーリングの考え方が主流でした。しかし近年では、ヒトが生来持っている自然治癒力に着目した、「キズをしっかり覆い、潤い(体液)を保ってきれいに治す」、モイストヒーリングというキズケアが一般的になってきています。

キズを負うと、キズ口から体液(滲出液)が浸み出してきます。この中には、キズ口の異物や雑菌、不要となった組織を排除するための因子、またキズをきれいに治すための因子などが含まれています。モイストヒーリングでは、キズを治すための成分が含まれた体液(滲出液)でキズ口が覆われるため、体液を拭き取ったり、ガーゼに吸わせて乾燥させてしまったりするよりも、治癒のスピードは比較的早くなります。

また、キズが早く治る以外にも、乾燥を防ぐことにより痛みを軽減することができたり、かさぶたを作らないことでキズあとが残りにくくなったりすることも、モイストヒーリングのメリットです。

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監修:市岡 滋(いちおか しげる)先生

 

<現職>
埼玉医科大学形成外科教授

<略歴>
1988年 千葉大学医学部卒業、東京大学形成外科入局、
大学および関連病院で臨床を研鑽
1993~1997年 東京大学大学院(博士課程)にて創傷治癒の基礎研究
1998年 埼玉医科大学講師
2000年 埼玉医科大学助教授
2007年 埼玉医科大学教授
2020年 埼玉医科大学病院 副院長

 

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参考文献
正しいキズケア推進委員会「キズケアコミュニケーション2009冬」
WebMD (2020) “What Are the Types and Degrees of Burns?”
https://www.webmd.com/first-aid/types-degrees-burns#1
Johnson & Johnson Consumer Inc. (2020) What’s Really the Best Way to Treat a Sunburn?
https://www.jnj.com/health-and-wellness/a-doctors-tips-on-the-best-ways-...
消費者庁 ニュースリリース(2013)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/130227...
日本カイロ工業会(2003)「カイロを使用するときの注意」
http://www.kairo.jp/chui/chui.html